2022年に「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(以下、外来生物法)」が改正されたことにより、2023年6月1日より「アメリカザリガニ」と「ミドリガメ」が「条件付特定外来生物」に指定されました。
既に家庭でペットとして飼育している「アメリカザリガニ」や「ミドリガメ」に対しても一部影響があり、また、ペットショップやアクアリウムショップを営む営業者にとっても影響の大きい法改正です。
本記事では、外来生物法で「アメリカザリガニ」「ミドリガメ」が指定された「条件付特定外来生物」とは何か、指定されたことにより家庭での飼育にどのような影響を与えるのかを解説します。
条件付特定外来生物とは
「条件付特定外来生物」について
条件付特定外来生物とは、外来生物法で特定外来生物に指定された生き物のうち、しばらくの間、特定外来生物に通常定められている規制の一部を適用除外とした生き物を指します。
どの程度規制を適用除外にするのかはそれぞれの種ごとに違うため、条件付特定外来生物を取り扱う場合には規制内容を良く把握しておく必要があります。
「条件付特定外来生物」は、あくまでも規制の一部が適用除外になっているだけであり、「特定外来生物ではある」という点に注意が必要です。
適用除外されている項目以外の外来生物規制は遵守する必要があります。
該当する種について
現在のところ、「アメリカザリガニ」と「ミドリガメ」のみ「条件付特定外来生物」に指定されています。
「ミドリガメ」は正式には「アカミミガメ」という生き物です。
「アカミミガメ」には3亜種が含まれます。
飼育者が多く、川や池でよく見かける「ミシシッピアカミミガメ」。
それからペットショップ等で見かける「キバラガメ」と「カンバーランドキミミガメ」です。
以上の3亜種が今回の規制の対象となっています。
法改正により家庭に生じる影響
「条件付特定外来生物」に指定されたからといって飼育できなくなるわけではありません。
今まで通り、自宅での飼育は許されています。
飼育を継続するための届出や申請等も不要です。
また、川や池で捕獲することもできます。
捕獲した個体を自宅で新たに飼育し始めるのも問題ありません。
では、どのような行為が規制されるのでしょうか。
規制される行為
まず1つ目が放出です。
現在飼育している個体を逃がすのはもちろん、捕獲した後一時的に持ち帰って観察し、元いた場所に放す行為も違法になります。
また、捕獲した個体を別の場所に移動させて放すことも許されません。
ただし、捕獲した個体をその場で放す(キャッチアンドリリース)のは問題ありません。
2つ目が有償での譲渡です。
飼育している個体に関しては終生飼育が求められますが、どうしても飼育できない場合には誰かに譲渡することになると思います。
その際に、有償で譲渡(販売)することはできません。
無償での譲渡(引取り料として元飼育者が金銭を支払う場合を含む)のみ許されています。
3つ目に頒布です。
たとえ無償であっても頒布は許されません。
不特定多数に自由に持ち帰ってもらったり、特定の集団であっても多数の者に譲渡するのは禁止となります。
そのため、繁殖した個体を学校でクラスメイトに配るといった行為は違法になる可能性があります。
これらの禁止される行為をした場合、罰則があります。
個人の場合は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金またはその両方。
法人の場合は1億円以下の罰金となります。
法改正により事業者に生じる影響
ペットショップやアクアリウムショップを営む事業者に対する規制も、基本的には家庭への規制と同様です。
事業者の場合は既に多数の個体を仕入れてしまっているかもしれませんが、既に入荷済みの個体であっても販売は禁止となります。
また、愛玩目的ではなく、肉食魚の餌としてアメリカザリガニを販売しているケースもあるかと思いますが、その場合でも販売や頒布は禁止となりますので、事業者自身で飼育するか、処分する必要があります。
ただし、特定外来生物と同様に、研究や教育目的での飼育で許可を得ている場合等、特殊なケースにおいては届出や許可を得ることで取扱えることもあります。
しかし、基本的には本法改正により取扱うことはできなくなったという認識で問題ありません。
最後に
今回の外来生物法の改正により「アメリカザリガニ」と「ミドリガメ」が「条件付特定外来生物」に指定されてしまいました。
どちらも非常に身近な生き物であり、子どもの頃にザリガニ釣りをしたりして遊んだ方も多いのではないでしょうか。
しかし、飼育者が終生飼育をせず、川や池に放してしまったことで繁殖が進み、在来種が絶滅の危機に追い込まれたり、自然環境が破壊されたり深刻な影響が出ています。
沖縄のような温暖な地域では外来種の熱帯魚が繁殖していますし、本州においても哺乳類や鳥類、爬虫類問わず、様々な生き物が飼育放棄や杜撰な飼育状況による脱走により繁殖してしまっています。
それによりまた新たに「特定外来生物」や「条件付特定外来生物」に指定される生き物が出てくるかもしれません。
指定されてしまうと飼育や販売は出来なくなってしまいます。
これからも様々な生き物と一緒に暮らせるように、飼育者一人一人が責任をもって終生飼育するように心掛ける必要があります。